月と雨音

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読書【世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?】

 

  久しぶりに本の感想です。こちらの世界のエリートは…ですが、発行されたのが2017年ということ。当時のベストセラーなので、読まれた方も多いと思います。要約や本の紹介をしているサイト、ブログは多数ありますので。内容について知りたい方は検索して、そちらでご確認下さい。私個人の感想を書きます。

 長いです。

 

 まず、わたしは一つ提言したいことがあります。日本の美術教育、ひいては美術という言葉を持ち込んだ明治期からの誤解によるもののせいなのか。日本では美術というものへの関心が間違っていると、常々感じています。美術館に行くのが趣味というと、妙な関心をされたり。履歴書に無難に書いているように思われる節があります。なぜでしょう。映画が趣味の方が毎月映画館に行くこと、釣りが趣味で川や海に出かける。なんら不思議ではありません。なぜが美術館、もしかしたら博物館も行くと言うと、「へぇ〜」って感じのリアクションが多いです。好きだから行くだけです。

 それと美術に限らす、工芸品なども作品の貴重さや、作る技術、工程には最初に興味を持たれることは少なく。みんな値段ばかり気にして、高いと知ると、じっくり見ますよね。そんなんじゃ、山口さんが本書で語られている美意識を育むには、相当の訓練が必要になります。普遍的な価値に置き換えないと比べられないものに関して、値段というのは、とても分かりやすい指標です。

 

 私はタバコが苦手ですし、吸う方とは友達になれませんが。何がそんなに良いのか、筆舌尽くして理解できなくても。例えば「タバコが例え1本1万円になっても吸いたい」と言われれば、それだけの価値を感じるものなのか、と想像しやすくなるのは確かです。美術を日本では教養というカテゴリに置くことが多く、ならば教養とは何なんだとなります。

 【生きる上で必要ではないが、知っていると心や人生が豊かになるもの。】私の中で定義する教養の意味合いです。辞書にも概ね、似たような言葉で説明されているかと思います。なんとなく物知り、もっというとインテリに見えるからといったところでしょうか。

 私の定義に関して、よく見てほしいのが、【心や人生が豊かになる】という部分です。人は言うまでもなく機械ではありません。機能や目的さえ果たせれば、色や形といったデザイン派なんでもいいはずです。しかし、好きな触り心地の服、好きな色のカバン、好きな香りの洗剤。好きなものを使っています。心や人生というのは、文化の中で育ってこそ深く大きくなると考えています。

 

 好みというのは環境によって、出会いやすい、出会えないものがありますし。時代ごと形や素材、流行があり。証明できない過程の話で申し訳ないのですが、同じ人間がう別の家庭や時代に生まれたら、全く違う人格になり。好きなものも異なると思います。日本は文化的に優れたものが数え切れないほどありますが、西洋化の波なのか。元々は工芸品と呼ばれる日用品の使い心地を、重用していたのか、鑑賞という文化の歴史が短いと考えています。たくさん物を見て、好きなものと好きでないものを見るモノサシが揃わないまま。これが良いと刷り込まれかねない教育環境にあるのが、とても残念です。

 アニメが好きなら、オススメ教えてと言われますが。その人の好みを知らずに、こちらの好きを押し付けることは、今後アニメ好きになるかもしれない機会を損なう行為ですし。同じく美術館に行くといえば、何か面白い展示を聞かれても。やはり相手の好きを知らないと答えられません。日本人は反省や原因を調べることは学校でも、会社でも嫌というほどしますが。上手く行ったときの理由や、チームの中での得意分野などを知る機会が少ないです。特に仕事では、チームが変わる機会も多いので、前までリーダーシップが得意と思っていた方が。別のプロジェクトでは、スケジュール管理が得意に変わることもあり得ます。

 全体の流れを知っているから、スケジュールもリーダーシップも取れる人のケースもあるでしょうし。チームの人をよく見て、声をかけるなど面倒見がいいからプロジェクトが上手く進んだのかもしれません。

 

 本書の中では経験、知識下さいアートのバランスによって会社は進化できると書かれています。そのアートというのが、各自の持つ美意識で。それを鍛えるには、多くの作品を見ることと、自分のモノサシを鍛えることで最後の判断を「美しいもの」を選ぶことの重要性を説いています。

 美しいというのは、ある人にとっては機能美であり。別の人にとっては、コストのかからない方法であり。また他方では、頑張れるやり方になります。本書は誰かを指導する立場になくても、誰しもが持ちうるものを、より最適な形にモノサシを整えることを書いています。

 

 少しでも興味を持った方は、本書の冒頭部分に結論が書かれていますので、そちらに目を通して見てください。理由や書かれた山口さんの思う理論が本文に展開されています。

 しかし疑問なのは、2年半ほど前に出された著作を読んで。ちゃんとモノサシを磨かねば!と行動した人がどれだけいるのか、という点です。ワークショップも数例ですが紹介されているけれど、日本の大企業と呼ばれる会社で、新しい動きを聞くこともなく。未だに株主からの利益追究に追われる日々で、企業トップの方々の美意識が変わっていないのだとしたら。大企業という言葉が滅びるのは、目前なんだろうなと思います。大きければいいわけではありませんが、大きくないとできない事はあります。